副業を始めたばかりの人にとって、「開業届って何?出す必要あるの?」と悩むことは多いもの。
結論から言うと、開業届は出しておくことで節税や信用面でのメリットがある一方、デメリットや注意点もあります。
この記事では、これから副業を始める方や、すでに少し収益が出てきた方に向けて、開業届の基礎知識から出し方、提出のタイミング、実際に出すべきかどうかの判断基準までわかりやすくまとめました。
「損しない副業」を続けるために、ぜひ最後まで読んでみてください。
開業届とは?副業でも必要になるケースとは
そもそも開業届とは?
「開業届」とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類で、
個人で事業を始めたときに税務署へ提出する書類のことを指します。
この届け出をすることで、税務上「個人事業主」として正式に認められるようになります。
副業でも事業性があれば開業届を提出することが可能で、
税務署側としても「どの人がどんな収入を得ているか」を把握するための重要な書類となっています。
副業でも開業届が必要なパターンとは
「副業」といっても、アルバイトのように雇用契約を結んで働くケースと、自分で事業として行うケースでは、扱いが大きく異なります。
開業届が必要になるのは、以下のような「事業性のある副業」を行うケースです。
開業届が必要になる主な副業例
- ブログ・アフィリエイト収入
- ハンドメイド商品の販売(minneやBASEなど)
- 写真や動画の販売(ストックフォトなど)
- プログラミングやデザインなどの受託案件(クラウドワークスなど)
- ココナラやnote、有料メルマガなどでのコンテンツ販売
これらの副業は、自分の裁量で行い、継続性と収益性があると判断されやすく、事業所得として見なされる可能性が高いです。
会社員でも出せる?副業と確定申告の関係
結論から言うと、会社員でも開業届を出すことは可能です。
実際に、会社に勤めながら副業をしている多くの人が、開業届を出して節税などのメリットを得ています。
ただし、開業届を出したからといって必ず確定申告が必要になるわけではありません。
確定申告が必要になる目安(給与所得がある場合)

- 副業の所得(売上−経費)が年間20万円を超える場合
この条件を満たすと、原則として確定申告が義務となり、
開業届を出していないと青色申告などが使えず損になることもあります。
ポイントまとめ
- 開業届は「個人で事業を始めたこと」を税務署に知らせる書類
- 副業でも「事業性」があると判断されれば提出対象になる
- アルバイトのような雇用契約では不要
- 所得が20万円を超えると確定申告が必要になる可能性あり
開業届を出すメリット
副業の収益が出てきたタイミングで「開業届を出した方がいい」と言われる理由には、主に3つのメリットがあります。節税や信用面での効果は、想像以上に大きいものです。
① 青色申告ができて節税効果がある
開業届を出す最大のメリットは、「青色申告」が可能になることです。
青色申告とは、一定の条件を満たした帳簿付けや申告をすることで、税制上の特典が受けられる制度です。
青色申告の主な特典
- 最大65万円の控除(e-Tax+複式簿記)
- 赤字の繰り越しが3年間可能
- 家族に払う給与が経費として計上できる(専従者給与)
たとえば、副業で年間50万円の利益が出たとしても、65万円の控除が適用されれば課税所得はゼロ。
副業収入に対する税金を大幅に軽減できるという点で、開業届は非常に重要な第一歩です。
② 経費がしっかり計上できるようになる
開業届を出して「個人事業主」になると、副業に必要な支出を事業経費として計上できます。
経費として認められる代表例:
- パソコンやスマホの購入費
- 電気代・ネット代の一部
- 仕事に使った書籍やセミナー費用
- カフェでの打ち合わせ費用
- ブログ運営に使うサーバー代・ドメイン代 など
もちろん、開業届を出していなくても経費は計上できますが、税務署からの信用性が変わってきます。
“事業としてちゃんとやっている”という立場が明確になるので、帳簿や申告の根拠がより通りやすくなるのです。
③ 事業としての信用が高まる(口座開設・融資など)
開業届を出すことで、事業実態があると証明できるようになります。
これは以下のような場面で役立ちます:
- 屋号付きの銀行口座を開設できる → 収入と支出の管理がしやすくなり、取引先にも信頼感を与えられる
- ビジネス用のクレジットカードが作れる → 経費管理がしやすく、付帯サービスも充実
- 事業資金の融資が受けやすくなる → 日本政策金融公庫などの創業融資でも実績として使える
将来的にフリーランスとして独立したいと考えている場合も、早めに開業届を出しておくことで**「事業年数」や「実績」を積むことができます。**
ポイントまとめ
- 開業届を出すと青色申告で最大65万円の節税効果が狙える
- 経費をきちんと計上でき、確定申告時の根拠になる
- 口座開設や融資など、事業としての信用力がアップする
開業届を出すデメリット・注意点
開業届は出したほうが節税に有利ですが、すべての人にとってメリットだけとは限りません。
副業スタイルや本業の状況によっては、デメリットや注意点もあるので、あらかじめ理解しておくことが大切です。
① 事業所得として見なされる=赤字でも申告が必要
開業届を提出すると、基本的には事業所得(営業等)として扱われることになります。
そのため、たとえ赤字でも確定申告が必要になる可能性がある点に注意が必要です。
たとえば、副業収入が月1万円ほどでも経費を多く使って赤字だった場合、帳簿をつけて申告する手間が発生します。
対策
・利益が小さいうちは「白色申告」にしておく
・帳簿付けを簡単にできる会計アプリを活用する
(例:やよいの青色申告オンライン、freee、マネーフォワード)
② 失業保険・扶養・年金など社会保険面で不利になる場合も
開業届を出して「事業をしている」ことが明確になると、以下のような社会保険関連の制度で制限がかかることがあります。
影響が出る可能性があるケース
- 失業保険(雇用保険)の受給資格がなくなる → ハローワークから「自営業」と見なされ、求職中扱いにならない可能性
- 配偶者の扶養から外れる(国民健康保険・国民年金の支払いが必要になる) → 年収の見込みが130万円を超えると扶養対象外になる場合がある
とくに、主婦や学生、副業で稼ぎ始めたばかりの会社員などは、こうした保険や扶養の影響も要チェックです。
③ 副業禁止の会社にバレる可能性がある?
「開業届を出すと会社にバレるのでは?」と不安になる人も多いですが、
開業届の提出そのもので会社に通知がいくことはありません。
ただし、以下のタイミングで間接的にバレる可能性はあります。
バレるリスクが高まるポイント
- 住民税が増加し、会社に副収入がバレる(住民税の「特別徴収」で給与天引きされる場合)
- 所得が一定以上になって、社会保険の扶養条件から外れた場合
バレないための対策
- 確定申告時に「住民税は自分で納付(普通徴収)」を選ぶ
- 勤務規定を事前に確認し、「収益化」ではなく「活動報告」程度にとどめる
ポイントまとめ
- 開業届を出すと、赤字でも帳簿・確定申告が必要になる
- 失業保険や扶養から外れるリスクもあり
- 開業届提出だけで会社にバレることはないが、住民税や社会保険経由でバレることもある
【実体験】開業届を出した私の場合
ここでは、実際に筆者(私)が副業で開業届を提出したときの体験をベースに、
「どのタイミングで出したか」「手続きはどうだったか」「その後どうなったか」を紹介します。
副業での収益が月3万円を超えてきた頃に提出
最初はブログやSNS発信など、自分の空き時間を使った副業からスタートしました。
最初のうちは収益もほとんどありませんでしたが、続けているうちに月3万円ほどの収入が安定して出るように。
このタイミングで、
- 「確定申告が必要かも?」
- 「青色申告の節税が使えるなら早めに出しておきたい」 と考え、**副業を本格的に継続する意思もあったため、開業届の提出を決めました。
税務署での提出は10分で完了
開業届の提出は最寄りの税務署に直接行って提出しました。
あらかじめ国税庁のサイトから「個人事業の開業・廃業等届出書」をダウンロードし、記入して持参。
実際に記入した主な項目:
- 氏名・住所・生年月日
- 屋号(任意)
- 開業日(収益が安定してきた月を指定)
- 事業の内容(例:Webライター・広告収入など)
- 所得の種類(事業所得)
- 事務所の所在地(自宅)
職員の方も慣れている様子で、確認と提出は10分程度で終了。
印鑑も必要なく、特に難しいことはありませんでした。
その後の青色申告もスムーズに進行中
開業届を出したことで、青色申告承認申請書も同時に提出しました。
これによって翌年から青色申告が可能に。
「青色申告って難しそう…」というイメージがありましたが、
freeeやマネーフォワードのような会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても帳簿作成が可能です。
実際、経費管理や売上の可視化ができて、
「副業を本気でやっている実感が湧いてきた」と感じました。
体験からのアドバイス
- 月2〜3万円以上の収益が出るようになったら、開業届を出す判断時
- 税務署への提出は想像以上に簡単
- 会計ソフトの利用で青色申告のハードルも大幅に下がる
開業届の提出方法をわかりやすく解説
開業届の提出は、手順さえ分かればとても簡単です。ここでは、提出までの流れをわかりやすく解説します。
必要書類は「個人事業の開業・廃業等届出書」
開業届として提出するのは、国税庁が発行している1枚の書類です。
書類の正式名称
- 個人事業の開業・廃業等届出書
この書類は、以下のいずれかの方法で入手できます:
- 国税庁のホームページからPDFをダウンロード
- 最寄りの税務署でもらう(窓口)
主な記入項目とポイント
項目 | 記入内容例 | 補足 |
---|---|---|
納税地 | 住民票のある住所 | 自宅でOK |
職業 | ライター、デザイナー、販売業など | 実態に合わせて記入 |
屋号 | 設定は任意 | 空欄でも可 |
開業日 | 実際に副業を始めた日、または任意 | 遡ってもOK |
所得の種類 | 事業所得 | 雇用契約がある場合は該当しない |
事業の概要 | ブログ運営・物販・ハンドメイド販売など | できるだけ具体的に |
提出場所は税務署!e-Taxからも可能
開業届の提出先は、自分の住所を管轄する税務署です。
提出方法は2通り
- 紙で提出:印刷して記入し、税務署に持参 or 郵送
- 電子申請(e-Tax):マイナンバーカードやICカードリーダーが必要
紙での提出が簡単!
「手間を減らしたい」「手続きが不安」という方には、紙提出+窓口持参がおすすめです。
印刷して記入し、そのまま持っていけば、窓口で確認もしてもらえるため安心です。
提出期限とタイミングの目安
開業届には、「開業した日から1ヶ月以内に提出」と記載されていますが、
提出が遅れたからといって罰則があるわけではありません。
ただし、以下のケースでは提出タイミングに注意が必要です。
青色申告をしたい場合
- 開業届とあわせて「青色申告承認申請書」の提出が必要
- 開業から2ヶ月以内に出さないと、その年の青色申告ができなくなる
提出の流れまとめ
- 国税庁サイト or 税務署で「開業届」を入手
- 書類を記入(職業、屋号、事業内容など)
- 税務署に持参 or 郵送 or e-Taxで提出
- 青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」も同時に提出
よくある質問Q&A
Q. 開業届を出さなかったらどうなる?
A. 税金の申告義務がある場合、出していなくても確定申告は必要です。
開業届を出さなくても、所得が一定額(給与以外で年間20万円)を超えた場合は確定申告が必要です。
ただし、開業届を出していないと青色申告(最大65万円控除など)が使えず、節税の面で不利になります。
Q. 副業が赤字でも開業届を出すべき?
A. 長期的に副業を続けるつもりなら、出しておいた方が得です。
赤字であっても、**赤字分を翌年以降に繰り越せる(青色申告時)**などのメリットがあります。
また、屋号付き口座やクレジットカードの利用にもつながるので、
「ビジネスとして継続する意思があるか」が判断基準になります。
Q. 開業届を出すと会社にバレますか?
A. 開業届の提出そのもので会社にバレることはありません。
ただし、住民税の通知や社会保険の変更などを通じてバレる可能性があります。
特に、確定申告の際に住民税の納付方法を「特別徴収(給与天引き)」にしてしまうと、会社に副収入が通知されるリスクが。
バレないためには:
- 確定申告で「住民税は普通徴収(自分で納付)」を選択
- 勤務規定に違反しない副業内容であることを確認しておく
Q. 開業届はいつ出すのがベスト?
A. 青色申告を狙うなら、副業を始めてから2ヶ月以内がベストです。
提出の法的な期限は「開業日から1ヶ月以内」とされていますが、
青色申告を適用するには“開業から2ヶ月以内”に「青色申告承認申請書」を出す必要があります。
副業の収益が安定し始めたら、早めの提出がおすすめです。
まとめ:副業でも開業届を出すかどうかは「収益」と「将来像」で判断しよう
副業での収入が増えてきたとき、「開業届を出すべきか?」は誰もが一度は悩むポイントです。
開業届を出すことで、
- 節税効果の高い青色申告が使える
- 経費がしっかり計上できる
- 屋号口座やビジネス信用が得られる
といった多くのメリットを受けられます。
一方で、
- 赤字でも確定申告が必要になる
- 社会保険や扶養に影響が出ることもある
- 勤務先にバレるリスクもゼロではない
といった注意点も存在します。